まやたろの体当たり日記 Wanderlust

東京銀座のOL→山梨で農業と狩猟をはじめる→2016北米&南米自転車縦断→2017夏全国キャラバン→2019秋「なないろペダル」(出版舎ジグ)刊行!

鹿の革を脳みそで鞣す Braintanning その1

革を柔らかくすると書いて鞣す(なめす)。
今まで何度かミョウバン鞣しに挑戦してみたものの、思ったように柔らかくはならず、結果的タンバリンになった。
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これはこれでいいのだが(わりと気に入っているが、叩くたびに毛が舞う)、文字通り柔らかくならなければ鞣しとは言えない。

全国で増え続けている鹿や猪の被害。そうして駆除されてしまった個体の革を少しでも有効利用しようと、「MATAGIプロジェクト」http://www.leather-circus.com/matagi/が立ち上がった。
産地から送られてくる皮を革にして送り返してくれる。それも格安で。

大月に住むレザー作家、藤本二菜さんは郡内地域で獲れたレザーを郡内レザーとして広めようとしている。https://www.facebook.com/27lumen/
わたしも自分でとった鹿をなめしてもらい、小物を作ってみた。
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鞣しを請け負っている墨田区の山口産業さんの見学にも伺った。
山口産業さんのレザーは、一般的に硬いとされている従来の植物タンニン鞣しの常識を覆すほど柔らかく、いつまでもほおずりし続けていたいほど。
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某有名ブランドのレザーも手がけているだけあって、その品質は確かだ。
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工場の中には大型の木製ドラムはじめさまざまな機械が所狭しと並び、天井には色鮮やかなレザーが吊るされていた。
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しかし、排水の浄化システムだけでも何千万というお金がかかるらしく、これだけの設備を揃えるのは容易ではない。

やはり餅は餅屋、なのか。。と諦めかけていた矢先、小豆島に住む内澤旬子さんのお宅にお邪魔して衝撃を受けた。
ルポライターである旬子さんは、世界中の屠畜の現場を取材するうちに、自分で体験しないとわからない、という想いに駆られ、豚の受精から立会い、それを育てて屠畜して食べ、そのすべてを一冊の本にまとめている。飼い喰い――三匹の豚とわたし

今は2匹のヤギと一緒に暮らしながら、本業のライターの他、ハンターとしても活躍していらっしゃる旬子さん。
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話をするうちに10年前にアメリカのオレゴン州で参加した脳漿なめしのワークショップで鞣したという革を見せていただいた。
写真を撮らなかったのが心残りでしかないのだが、その革もいつまでも触っていたいほど肌触りがよかった。茶味がかった色はsmokingといって出来上がったあとに燻すことで着くそうで、燃やす木の樹種によって色合いも緑がかったり黄色がかったりと変わるそう。

そしてその時のワークショップ講師を勤めていたというMatt Richards さんの本を見せていただいた。
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ページをめくるごとに、わたしのテンションは上がりまくった。
なぜならそこには鞣しの歴史から、ノウハウから、さらには鹿の骨を使った道具作りや衣服の作り方まで、ありとあらゆる先住民族の知恵とMattさんらが試行錯誤の末にたどり着いたエッセンスがもりもりだったからである。鞣しに使うものや道具も、灰や脳みそや丸太など、その辺で手に入るものばかり。つまりお金をかけずにあの素晴らしいレザーが手に入るのだ!
この直後にAmazonでポチったことは言うまでもない。(アメリカにしかないようで届くまでに2週間かかった)

かくして今、わたしは皮と格闘している。
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まずはfleshingという肉や脂肪を皮から除去する作業。これが地味にめんどくさい。高圧洗浄機でやれば簡単なのだが、先住民族はそんなもの持っていないだろうから文明の利器には頼らない。。!

次に皮から毛を除去するために、アルカリにする。アルカリにすることで毛穴が緩み、毛が抜けやすくなる。
灰がベストだが、なければ石灰でもよい。濃度は生卵がちょうど浮くぐらいがいいらしい。
気温によるが3日以上放置する。(石灰の場合には時々混ぜる)
毛を引っ張ったときにするすると簡単に抜けるようになれば準備OK。
無理やり抜こうとするとちぎれるので、その場合はもうしばらく漬けておく。
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わたしの場合は10日ぐらいかかってようやく抜けるように。それでもまだ抜けづらいところがあるので再び浸けている。

というわけでつづきはまた後日!

ちなみに、この本の内容があまりに面白いので、日本語に翻訳させてもらえないか、ただいまMattさんに交渉中です。


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