熊本編 #1 サイハテという名の楽園へ向かう
この度この旅に出た理由のひとつが、三角エコビレッジサイハテの6周年イベント「
SAIHATE 6th Anniversary Fes.《楽園2017》」に参加するためだった。
サイハテとは?
熊本にある1万坪のエコビレッジ。パーマカルチャーをとりいれた〝楽園デザイン〟をベースに、アースバッグ建築はじめのあり方を模索・実践するコミュニティーです。
道の駅で目を覚まし、人が来る前にテントを片付けている間、トイレでiphoneを充電させてもらっていた。片付けを終え、さあ出発しますか、とトイレに戻ると、そこにあるはずのiphoneがいない。
い な い…
わずか15分ぐらいの間にいなくなっているではないか…。掃除のおばちゃんに聞いても知らないと言われ、まだ開店時間まではだいぶあるのでスタッフもいない。仕方ないので近くの警察署に行って紛失届をもらった。
よりによって今日の目的地であるサイハテはどうやら山の中にあるみたいなのだ。余裕を持って出発したはずが、思わぬトラブルで時間をくってしまった。果たして夕暮れまでにたどり着けるのだろうか。大きな不安を抱きながらペダルを踏みしめる。
ああ。あまりにも突然の別れ。昨年アメリカへと旅立つ前からの付き合い。たのしい時も、苦しい時も、いつもわたしを見守り、導いてくれた彼。パタゴニアの雨にやられて瀕死状態になったこともあったけど、お米パワーでどうにか復活(ジップロックの中にお米と一緒に入れておくと水分を吸ってくれる)。わたしは彼に何もかも依存していた。なくしてはじめて気づく彼の存在の大きさ。触れようとしてもそこに彼はいない。
しかし走りはじめてしばらくすると自分の視線がいつもと違うことに気づく。今までいつも彼のことばかり見ていて、周りの景色を見ることを忘れていた。何時までにここに着かないといけないという時間に追われ、道順に振り回され、自分がどこにいるのか、なんのために旅をしているのか、わからなくなっていた。
そうか。これは神様が与えてくれた試練なのだ。
そんなことを考えながら走っていたら、「ますぱん」というかわいらしいパン屋さんを発見。今までだったら中に入るよりも先に彼にお伺いを立てていた。ここのパン屋さんの評判はどうかしら?とか、どのパンがおいしいのかしら?とか。しかし彼のいない今、自分の直感を信じるしかない。
結論から言うとここのパンはめちゃくちゃおいしかった。特にクリームパンは忘れられないおいしさ…。人の評価よりも自分の直感に従うのだ。
それからひたすらこぎまくり、三角方面の海岸沿いを走る。
どうにか近くまではたどり着いたのだけど、最後の道がどうにもわからない。細かい地図もないし、どうしよう…。途方に暮れていたところ、一台の軽トラが通り掛かる。
「すみません、サイハテっていうエコビレッジご存知ですか?」
「ああ、あの丘の上や」
と言って指された方を見る。おそらく標高にして100mぐらい上だろうか。ここから見る限りは木しか見えない。
そのおじさんがとっても親切で、わざわざ上まで案内してくれた。
「「サイハテ」っちゅうぐらいやけん、この世に夢も希望もなくした人たちが集まるところなんやろ?」
と言う言葉に思わず吹いてしまったけど、地元の人達にはそんな風に映るのだろうか。
何度もお礼を言い、引き続き坂を登る。最後の坂がこの旅はじまって以来最強にエグくて、登ろうとしたら前輪が浮き上がった。
なんでこんなところに…と内心思ったけど、その坂の先に待ち受けていた景色を見て納得した。
こりゃ楽園ですわ。
焼き立てパンもおいしい飲み物も全部ドネーションでまわってる。
廃材エコヴィレッジ ゆるゆるの飛龍さん&ゆきよさん、宮崎でハッピーソルトという塩を作っているネジくんとも再会したり、他にも面白い方にたくさん会えた。
翌日は高校の友人ファミリーも遊びにきてくれた。
子どもも大人もとにかく自由に自分のやりたいことをやっていて心地の良い場所だった。わざわざ来た甲斐があった。
またゆっくり来たいなあ。
※ちなみに、なくしたケータイはちゃんと道の駅に届けられていたようで後日戻ってきました。めでたしめでたし。