ママチャリグランプリなめてた
「ママチャリレースがあるから出てみない?レースって言ってもメインはバーベキューでほとんど食べてるだけだから。」
そう言われて何の気なしに了承した。
毎年正月明けに富士スピードウェイで行われるスーパーママチャリGP。一周4.5kmあるコースを7時間チームで走り続けるというもの。毎年1,000チーム以上が参加しているらしい。
ママチャリという響きなのか、バーベキューがメインと言われたからなのかわからないけど、とにかくわたしはナメていた。ママチャリグランプリをナメていた。
前日の深夜に出発して会場入り。学生時代、友人の影響でF1グランプリにハマっていた時期があったことを思い出しながら、はじめて入るサーキット場にワクワクしていた。
すごい気合の入ってるやつも。
夜が明けてきて、富士山もお目見え。
寒いのでクラムチャウダーを食べて温まる。
8時。いよいよレースがはじまる。
サイクルジャージを着てママチャリとは思えないほど猛スピードで駆け抜けるガチのチームから、まったくスピードを考慮していない装飾を施したおたのしみチームまでさまざま。
そしてついに自分の番がまわってきた。
なにこれ、めっちゃしんどいやん…
こんなん聞いてないぞ…
最初にいきなり3連続の登りがあり、高低差35m(ビル10階分相当)、最大傾斜10%の激坂を一気に駆け上がる。
このセクションが富士山がめっちゃきれいに見えるのだけど、もちろんそんな景色を楽しんでる余裕などなく、もう必死に坂に喰らいつくしかない。
アンデスの山も、箱根の峠も、たしかにしんどかったけどあくまで自分のペースで登っていた。これがひとたびチームとかタイムとか意識しだすと途端にきつくなる。今まで女性で12分切った人はいない、と言われて負けず嫌いに火が点いてしまったのである。
さらにキツさを助長するのがママチャリの座面を一番下まで下げないといけないってこと。
まるで三輪車を乗っているかのように漕ぎづらく、座っていてもぜんぜん足が休まらない。立っても地獄、座っても地獄。
ゼェゼェしすぎて喉がガラガラになり、一周を終えたあとは文字通り地面に倒れ込んだ。
つばを飲み込むと血の味がした。そして12分の壁は厚かった。
その間も他の面々はバーベキューに勤しむ。わたしを誘ってくれたきいちゃんは、先日たこ焼きマスターの称号を得たらしく、早速そのワザを披露してくれた。
わたしも先日解体してきた鹿肉を持参。
カニやジンギスカンなどの豪華な食材も次々と登場。でも次また走ることを考えるとあんまりお腹いっぱい食べられないというジレンマ。生殺しです。
そんなこんなで焼いたり食べたり走ったり片付けしたりしているうちに慌しくあっという間に7時間が経過。最後までみんなケガなく走れてよかったです。もっと他の人とゆっくり話せたらよかったな。
帰りは関西組の車に乗せてもらって大阪へ。
ここからまた新たな旅が始まる。