ライフイントーキョー
頰を撫でる生温い風が春の訪れを告げる。2月までにやろうとしていたあれこれも終わらぬまま、気づけば3月に入って一週間近くが経とうとしている。
ここ最近の近況はというと、
旅の記録をまとめるための執筆活動に勤しむ傍ら、1月から週に3-4回、都内のレストランでアルバイトをしている。お金なんてなくてもなんとかなるだろうと思っていたが、年末に口座からお金を下ろそうとして、683円しかなくて下ろせず、「さすがにこいつはやべえ…」と思ったことがことの発端である。
だからと言ってお金のためだけの仕事はしたくなかった。食べることと料理が好きなので、食材にこだわりのあるオーガニックレストランでキッチンスタッフをやらせてもらっている。ここ2年ほどまともに働いていなかったわたしにとって、働くという行為自体が新鮮であり、今まで自己流でやってきた料理を理論的に学べるのはとても面白いしありがたい。と同時に、時間とお金に追われる生活に対するストレスもある。
東京という街はかくも忙しく、消費一辺倒なのかと改めて思い知らされる。家と職場を行き来するだけで電車賃はかかるし、飲みに行けばその日の半日分の給料は平気で飛んでいく。そりゃみんなあくせく働かないと生きていけないわ、と思ってしまう。
そんな中、ご縁あって春から大分に住むことになった。それはあまりに急で、あまりに自然な流れだった。まるでなにかに導かれたかのようだった。
せっかく決まったばかりのバイトも3月いっぱいで辞めることになった。こうして満員電車に詰め込まれるのも、両親とたわいもない会話をするのも、残りわずかかと思うと、途端に全てが愛おしくなる。あたりまえのように続く日常も、実はあたりまえではないことに気づかされる。
そう思いつつも、わたしは相も変わらずささいなことでイライラして家族とぶつかってしまったり、「今日も何もできなかった」と自己嫌悪に陥ったり、そんなしょうもない日々を送っているのだけれど。
残りわずかなトーキョーライフ、そんなしょうもない日々も含めて、愛していこう。