まやたろの体当たり日記 Wanderlust

東京銀座のOL→山梨で農業と狩猟をはじめる→2016北米&南米自転車縦断→2017夏全国キャラバン→2019秋「なないろペダル」(出版舎ジグ)刊行!

そろそろブログを、


書きたいことはたくさんあるのに、あまりにめまぐるしくいろんなことが起こったもんだから一体なにから説明すればいいのかわからなくて、なんとなく後回しにし続けた結果今に至る。なのでいろいろとすっとばして書きたいことを書くことにしよう。


大分で暮らしはじめて一ヶ月。すでにいろんなことがあった。

4月半ばにやってきたときは一面草ボーボーだった畑。家のことは後回しにしてひたすら草取りと種まき、苗の植え付けをする。お金に頼らない暮らしを目指すわたしたちにとっては、この畑こそが貯金であり未来への投資なのだ。

庭にはびわ、柿、茶、桑、桜、イチョウよもぎ、どくだみ、かきどおし、山椒、せり、みつば、すぎな、クマザサなどたくさんの植物が生えている。


こうした植物をせっせととっては酵素ジュースやお茶を作ったり、草木染めをしたり。

春はいそがしい。





庭に巣箱を設置するとすぐにニホンミツバチが入ってくれた。これで今年はハチミツも自給できるかも。



にわとり小屋を襲ったテンを捕まえてにわとりに食べさせたり、孵卵器で温めていたヒヨコが孵ったり、ある日突然お母さん鶏が死んでしまったり、そのお母さんが遺した卵を次の世代の鶏が温めたり、生まれたヒヨコは2羽ともすぐに死んでしまったり。

自然の中ではいつも生と死が隣り合わせにある。



ヒヨコが孵りはじめた🐣

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旅人やらご近所さんやら来客があるときは、庭でとれた草花をあしらってお花見ランチ。

春はたのしい。



庭でお花見ランチ

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これだけ見ればさぞかしたのしい暮らしに見えるだろうけれど、実際は大変なこともたくさんあった。

初日から台所のパンドラの箱をあけてしまったわたしは、おそらく長きにわたってそこに鎮座しておられたカビとGとの闘いを強いられることになる。

冷蔵庫も風呂もコンロもない生活。

週に2回ほど自転車で5km離れたスーパーへ買い出しに行くついでに氷をもらってクーラーボックスへ。これで数日はもつ。

家の前に温泉はあるが、彼は節約のためにホースで水浴びをしているぐらいなのでわたしもあまり贅沢はできず、2、3日に一回にしている。

煮炊きはロケットストーブで。竹細工で使わない部分や庭の剪定枝などはたくさんあるので薪には困らないが、雨の日はなかなか火がつかないこともある。

もともと彼が引っ越してきた4年前は今よりもさらにボロ家だったそうで、雨漏りのために床が腐り、ところどころ穴が空いているし(何度か穴にはまった)、2年前の地震の時にトイレの床が傾いたという。屋根は直したけれど、床はそのまま。おまけに本好きの彼は大量の本(ダンボール50箱?)や古道具を所持しており、家の半分以上は物置と化している。

「ねえ、早く床直そうよ。」

わたしがそう言うと、

「この本をどけないと床も張れないんだよね。まずは本を入れるための書庫を建てよう。」

そう言っていたはずなのに、彼は来る日も来る日も庭に竹を植えるために深くて長い穴を掘り、丁寧にセメントで塗り固めている。

「こうやって壁を作ることで地下茎が勝手に伸びていかないんだよ。こうしていろんな種類の竹を植えて観察するんだ。竹にとって快適な環境を作ってあげないとね。」

ドヤ顔の彼にわたしの堪忍袋の緒が切れた。

「一体いつになったら書庫を作るの?そしていつになったら床張るの?台所もお風呂も、やることはたくさんあるのに、なんで竹なの?竹よりもまずは自分達に快適な環境が必要でしょ?」

彼とは目指してる生き方や価値観が近くて、だからこそ一緒になろうと決めたのだけれど、それでも細かい部分や優先順位は違う。彼にとっては竹が一番。わたしは快適な住環境が一番。今までお互い自由気ままに生きてきた分、ぶつかりあってばかり。いかに相手の意見を尊重しつつも自分の主張をするか。どうしたらお互いにとってベストな方法を見つけられるか。その塩梅がいつも難しい。

カビとGのせいなのか、そんなストレスのせいなのか、はたまたその両方なのか、原因は定かではないが10年ぶりぐらいに持病のアトピーが出た。あっというまに顔から首にかけて真っ赤に腫れあがり、鏡を見れば泣きそうになり、外出するのも人と会うのも億劫になり、気持ちはどんどん落ち込んでいく。

「わたしはこんなにがんばってるのに、どうしてわたしの意見を聞いてくれないの?」

もっとああしてほしい。こうしてほしい。彼にひたすら怒りをぶつけていた。それまで受け流していた彼にもついに限界がきた。その時はじめて彼がどんな大変な想いをしてこの家を今の状態まで回復したのかを聞かされた。

「俺はゼロどころかマイナスからのスタートだったんだよね。庭もジャングルみたいになっていたから木を伐って抜根して、屋根は雨漏りしていたからセメント瓦を全部おろして葺き替えて…だからこれでもだいぶよくなってるんだよ。もちろんもっと良くしていくつもりだけど、少しずつしかできないからね。なんでもあるのがあたりまえになっちゃうとあれもこれもって思っちゃうけど、俺にとってはないのがあたりまえなんだよ。」

ハッとした。わたしは旅で一体何を学んだのだろう。自転車旅をしていた時、すべてがないベースだった。今日もごはんが食べられる幸せ。安心して眠る場所がある幸せ。屋根と壁があるだけでもありがたかった。シンプルな幸せにたくさん気付かされた。
それが今のわたしときたらなんだ。大切な人と一緒に自然に囲まれて暮らすなんて、ちょっと前の自分からしたら考えられないほど幸せなはずなのに、口をついて出てくるのは不平不満ばかり。ああ、穴があったら入りたい。


ひとしきり泣いたあと思い浮かんだのはあの砂漠だった。Day 133-135 Laguna route #2 - まやたろの体当たり日記
この1ヶ月ですでに砂漠を3つぐらい抜けたような感覚。
日々の暮らしもまたひとつひとつが学び。一進一退しながらも毎日生まれ変わっています。

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