まやたろの体当たり日記 Wanderlust

東京銀座のOL→山梨で農業と狩猟をはじめる→2016北米&南米自転車縦断→2017夏全国キャラバン→2019秋「なないろペダル」(出版舎ジグ)刊行!

初物

2か月前、はじめて獲物を取った日の日記が出てきました。忘れたくないので、ここに残します。

7月1日 初物
今日、はじめて自分のわなにシカがかかった。昨日仕掛け直したばかりだったから、今日はかかっていないだろうと思ってナイフを車に置いたままクロックスをはいて見回りに行った。
たしか下の段に2つ、上の段に1つ。下の段は何もないようだ。上の段も…あれもう一段上だっけ?よく見ると…何かがこちらを見ている。じっと見ている。あれは…シカ!?
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うおおおおおシカだ!!!興奮する気持ちを抑えつつ、そっと近づく。思っていたよりもかなり小さい。まだ子供のようだ。これなら自分一人でもできるかも。と思ったけど、やまもとさんに連絡した。やまもとさんは今起きたような声をしていたけど、すぐに駆けつけてくれるという。ありがたい。
とりあえずなにかせずにはいられなかった。のこぎりを家に忘れてきたので木を切ることができず、近くにあった小さめの丸太を手に取る。これでワイヤーを押さえつけて可動範囲を狭めようという作戦だ。丸太をもってにらめっこ。相手はじっとこちらを見ている。なんというつぶらな瞳。だめだ。丸太を投げるも、コロコロと転がり落ちてしまう。シカは逃げようと必死にもがくが、ワイヤーがしっかりと食い込んで逃げられない。
そうこうしているうちにやまもとさんがやってきた。わたしの投げた丸太を見て笑っていた。そんなんじゃだめだ、と言ってそこらに生えている雑木を切って投げた。ワイヤーがからむ。もう一本殴る用の木を伐って、手渡してもらった。
もう一度見つめ合う。一対一で対峙した時に比べると、やまもとさんが来てくれた安心感はとても大きかった。「いけ」という自分とそれを止める自分が葛藤していた。べつにこの子に何か恨みでもあるわけでもないし、殺す理由なんて何もない。明日食べるものに困るわけでもない。わたしは一体何のため、誰のためにやっているのか? そんなことを思いつつも、気付けばふりかざしていた。一発目は外れ、つづいてもう一回。今度は入った。白目を向いて倒れた。すかさずやまもとさんが頭を押さえつける。急いでナイフを手に取り、のど元辺りをゆっくりと刺した。「ピー」という悲鳴が響き渡る。思わずごめんね、と言いながらもう一度刺す。ああ…
赤い血が地面に吸い込まれていく。手は震えていた。そのあとも真っ赤な血を流しながら、まだ生きている。ああ…ごめんなさい…

やまもとさんにおめでとうと言われても素直に喜べない自分がいた。うれしいような、これでいいのかっていうようは複雑な気持ち。
でも、自分の手でやるってこういうことなんだ。ふだんスーパーで売っているお肉は誰かが心にフタをして同じことをしているんだ。
生きることは何かの命を奪うこと。それが植物であれ、動物であれ、同じこと。命をもらって生きている以上は、その命をまっとうしないといけないな。そんなことを思った。
この気持ち、この重さ、想いを忘れずに持ち続けていたい。きっとだんだん慣れてしまうから…
シカさん命をありがとう。おいしくいただきます。
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