滋賀編 #2 鮒鮨とこらぼ
黒壁の街並みで有名な長浜。
「どんどん」という長屋を改築したオサレなシェアスペースへ。
どんどんのスタッフさんに湖まて徒歩1秒の屋根付き物件(東屋)を教えてもらって投宿。
翌朝カラスの鳴き声で目がさめる。今日は10時から雨の予報なので太陽よりも早起きするつもりだったのだが…
屋根付きだが壁なしのため明け方は寒かった。
カメラマンのMOTOKOさんに、「高島に行くなら絶対会って欲しい人がいる」と言われ、まずやってきたは江戸時代から続く老舗の鮒鮨やさん、「魚治」。
魚を麹に漬けて2年間発酵させて作る鮒鮨。冷蔵庫のなかった時代の魚の保存方法。昔のひとの知恵が作り上げた食文化。チーズやヨーグルトなどが今ほど一般的ではなかった時代、発酵による酸味は受け入れられにくく、したがって甘露煮(鮒鮨の飯をおとして甘辛く煮る)のほうが人気だったそうだが、今は発酵食ブームなこともあって元々の鮒鮨の方が人気があるそう。時代とともに人々の味覚や趣向が変わるのは面白い。
予報通り10時から雨が強くなってきた。
高島市の針江地区は平成の名水百選にも選ばれた「生水(しょうず)の郷 」。
各家をはじめ100カ所以上の湧き水が溢れ、600年以上前からある水路を今も生活の中で利用している。
ここの水を仕込み水として使う酒蔵も多い。
そんな水の町の一角に、「喫茶 古良慕(こらぼ)」というとても素敵なカフェがある。元々は古民家を取り壊す時などに出る廃材や建具をきれいにして売っているお店で、最近有名になった長野県のリビルディングセンターよりも先駆けてやられている。
カフェの中には古材を使ったテーブルやイス、棚などが配置されていて、ついつい長居したくなるような素敵な空間。
日替わりランチも美味しい。
ここで針江 のんきぃふぁーむというお米農家を営む石津さんと待ち合わせた。
本当はこの日のうちに京都に移動するつもりだったのだけど、いつのまにか土砂降りだし暗くなる前に京都に着くのは難しそうな時間となり、石津さんや古良慕のオーナー・島村さんにも「泊まっていけば」と言っていただいたので、そうさせてもらうことにした。
島村さんの家系は元々葭屋根を葺く葭商をされており、その後も古民家の移築や再生をしていたらしく、古民家をリノベーションした立派なおうちに住んでいた。
今津で100年以上に渡って和ろうそくを作っており、石津さんの友人でもある大與(だいよ)さんにも連れて行っていただいた。
櫨の実や米ぬかから作られる和ろうそく。今では櫨を搾る農家さんもろうそく職人さんも数人しかいないという。伝統的なものからポップなものまでラインナップもさまざま。
翌日から古良慕で展示をされる三瓶さんの作品を見せていただく。三瓶さんの手にかかれば流木やサンゴにも再び命が吹き込まれる。
夜はみんなで鍋を囲む。祇園の料亭で料理人をしていたという島村さんの料理はめちゃくちゃおいしかった。
地元のクリエイターさんも来て賑やかな食卓に。わたしが以前からずっと会いたかったhaiさん(鹿骨アクセサリーを作っている方)もなんとめちゃくちゃ近くに住んでおり、島村さんや石津さんがあの手この手でどうにか連絡を取ると、すぐに来てくださった。わたしが狩猟をはじめた頃、皮や骨を無駄にしたくなくていろいろと調べていたところ彼女の作品を見つけた。本当に美しくて、興奮して作り方などを尋ねたところすぐにお返事をくれたのであった。あれから数年のときが経ち、いろんなご縁とタイミングが重なって出会うことができた。
人の出会いはつくづく不思議なものだと思う。