イノシシを生け捕りにする!? ”ラストハンター”片桐邦雄さん
所変われば狩猟も変わる。
その時代、その土地によって当然ながら文化や風習の違いがある。
狩猟をはじめてから、そうしたいろんな狩猟のカタチを見たいと思うようになった。
もう1ヶ月以上も前のことになるが、
何かとご縁のある浜松にまたあそびに行きたいと言ったら、
浜松在住のまおこさんが「ぜひ片桐さんのところにいこう!」と、
わざわざわたしが行く日程に合わせて
「片桐さんに会いに行くツアー」を企画して下さった。
”ラストハンター”こと片桐邦雄さんは浜松市天竜区に住む猟師さんで、
冬は山でシカやイノシシを罠で捕獲し、春〜秋は、天竜川でウナギやアユなどを捕り、
ニホンミツバチの養蜂も行い、自らが営む割烹「竹染」で振舞っている。
(詳しくは「ラストハンター 片桐邦雄の狩猟人生とその「時代」 (みやざき文庫78)
」)
まおこさん曰く「止め刺しが神!!」とのことだったので、
一体どんなものなのだろうかと興味津々。
なんでもイノシシを生け捕りにするという。
イノシシと言えば、狩猟をはじめる前から
「あいつらは自分の足を引きちぎってでもかかってくるからな、
へたに近づいちゃいけないよ」と口酸っぱく言われてきた。
わたしの師匠であるやまもとさんも昔イノシシにやられて
37針縫う大怪我を負ったこともあるそう。
「手がそっくり入る」ほどおしりをえぐられた、という話は
少なくとも15回は聞いた気がする。
余談はさておき、そんなおっかねーものを生け捕りにする!?そんなこと可能なの?
とワクワクドキドキしながら現場に向かう。
片桐さんのお店の横には加工所が併設されており、中を覗き込むと、、
なんとイノシシが大小合わせて3頭転がっていた。
しかも、、生きている!
目と口をガムテープでぐるぐる巻にされているが、
時々思い出したようにビクン!と動くのでその度こっちもビクン!となる。
この状態にするまでがどんなに大変か、
わなにかかったイノシシを見たことがある方なら想像するだけでも恐ろしいだろう。
崖崩れが起きたのかと思うほど斜面を荒らして暴れまわるイノシシの姿は、
近づくことすらままならない。
片桐さん曰く、くくりわなにかかった足と反対側の足もくくって固定してから
イノシシに馬乗りになり、ガムテープでぐるぐる巻きにするらしい。
今までかかった中では最大140kgの大物もいたが、
それも同様に止めたというので驚くしかない。
生け捕りにする理由は衛生的な環境で解体でき、
かつ安定した品質でお肉を提供することができるからだそう。
屋内で解体することで、土や落ち葉などの異物の付着も防げるし、
毛がついてもすぐに洗い流すことができる。
さらに、道具も環境もそろっているので、常に同じ条件で血抜きができる。
野生の肉の味は血抜きで決まる、とよく言われる。
日本では極力臭みのない肉が好まれるため、
獲物を仕留めてからいかに早く血抜きをするかが問われるが、
むしろヨーロッパではジビエ独特の臭みのある肉が好まれるため、
あえて血を肉に残して熟成させる方法もあるほど。
また、興奮した状態よりも獲物を落ち着かせてから
止め刺しするほうが臭みが少ないという。
そして緊張の一瞬。
片桐さんが槍をもち、心臓に一突き。
こんなに静かな止め刺しは見たことがなかった。
その後台の上に載せたかと思えば、あっという間に内臓を取り出した。
内臓を取り出したあとも、まだお肉がピクピクと動いていた。。
片桐さんのお店ではモツや睾丸などもメニューにのせている。
猪鍋やモツ鍋と言えば、一般的には何度もゆでこぼしたり、
しょうがやみそを入れたりして臭みを消すことが多いが、
ここでは味付けは塩、しかもゆでこぼすこともないというので驚きだ。
だから本当にていねいに洗う。洗濯ネットに入れて洗う。
お肉の方は一晩吊るして血が抜けてから解体をするそう。
ひととおり終わったあとは待ちに待ったお食事タイム!
これがうわさの猪鍋!
具も味付けもいたってシンプルで、素材そのものの味を味わえる。
イノシシの脂は舌の上でとろけた。うまい。。脂だけでも食べ続けたい。
はじめは一枚一枚噛みしめるようにに食べていたが、
あとからおかわり自由だと知り急に箸が進む一同。
結局一人あたり一皿ぐらい食べた。お腹がいっぱいでも食べ続けてしまうほどうまい。
それはそれはおいしいスープがでていたので、シメの雑炊がなかったのが唯一残念。
先ほどのイノシシのハツとレバーを炭焼きにしたものもおいしかった。
最後に片桐さんがいらして、みんなでお話をした。
我々の質問にひとつひとつ、ていねいに答えてくださった。
中でも驚いたのが片桐さんの一日の予定。
毎朝見回りだけでなんと90kmも移動しているということ。
午前中はひたすら見回りで終わるらしい。
そして午後は今度は新しい猟場を探すために、これまた2−3時間回る。
帰ってきたら獲物の解体とお店の準備。
夏になればウナギやアユ釣り。
自然と寄り添い、自然に敬意を払い、必要以上に獲らず、めぐみをいただく。
確かな技術と熱い想いをもった唯一無二の猟師、
片桐邦雄さんにお会いしたい方は、ぜひ「竹染」へ!
次はモツ鍋をいただきたいッ!!
片桐さん、そしてこの場を作っていただいたまおこさん、ありがとうございました!!
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