見覚えのあるパエロアの街に到着し、大きな荷物を抱えて降りると、目の前を知っている顔が通った。ロビンだ。わたしを出迎えにわざわざバス停まで歩いてきてくれた。
「暗い中ひとりで歩かせるわけには行かないだろう」無愛想だけどすごくやさしい。
わたしが予定外に早く帰ることになったことを知って、彼は予定を立ててくれた。
「明日は午後からeバイクでHauraki rail trailにサイクリングにでも行くか?それであさってはHot water beachにでも行こう。ニュージーランドの思い出を作らないとな。」
ロビンの仕事が片付くのを待って16時前に出た。渓谷のところまで自転車を積んでバスで移動し、そこからサイクリング開始。
つり橋を渡り、山道を進んで行くとトンネルが現れる。
トンネルは1kmちょっとあって、中は薄暗く、一人で進んでいたらとても心細かっただろう。
だがeバイクはすごい!サスペンションにディスクブレーキ、
そしてアクセルまで付いているこのeバイクはまるで原付のように進む。
21段変速が付いているのが不思議なぐらい、変速する必要すらない。
「ほら、アシストをMAXにしてアクセルふかしてみろ!」
言われたままにすると、ひゃっほーい!なにこれめちゃくちゃ楽しい!
この自転車だったら坂道も楽々だなあ。
ロビンも山道で乗るのははじめてらしく、とても楽しんでいた。
自転車を置いて今度は渓谷をトレッキング。
18世紀後半に金鉱山で栄えて居たこの一帯は、
迷路のように広がる鉱脈、掘り出した金の入った岩を運ぶ線路跡、
岩を割りやすくするために加熱する巨大なケルン、
水力を利用して岩を粉砕する工場などが遺されている。
線路の上を歩き、ケルンをのぞきこみ、真っ暗な鉱脈を進む。
これだけのものを作り上げるのに、どれだけの労力と時間がかかったのだろうかと
想像するだけで気が遠くなりそうだ。
だが渓谷沿いの崖っぷちを進んでいくのはアトラクションのようで楽しく、
なによりも景色がすばらしかった。ロビンにつれてきてもらわなければ、
こんなところがあることすら知らなかっただろう。
最後の最後で雨に降られた。慌てて車に駆け込んだ瞬間、
雨脚はさらに強まって雷雨になった。
背中と腰が痛いと言うロビンにマッサージをしてあげると、
少し触っただけで悲鳴をあげるほど痛がっていた。
こんなにひどい状態で、歩くのすらしんどいだろうに、
それを見せることなく日々仕事をし、おまけにわたしの面倒を見てくれる彼に改めて敬服の念を抱いた。
そのあとは二人でワインを飲みながらギターを弾いた。
と言っても、わたしとロビンが二人とも知っている曲は限りなく少なく、
ほとんどはロビンが弾き語りしてくれた。
「今日はとても楽しかった。ありがとう」そう言うロビンに、
「ありがとうはこっちのセリフだよ」と言うと、
「いや、あれは俺がやりたくてやったんだ。俺のエゴなんだ。」という。
そうやってわたしに気を遣わせないようにするところまで彼はとことん優しいのだ。