母とお遍路
4月末、ゴールデンウィーク直前に母と歩き遍路に行くことになった。と言っても今回は様子見も兼ねて、3日間で行けるところまで行こうという「区切り打ち」。
歩き遍路は母の長年の夢だった。
母は祖父(わたしの曽祖父)が大好きで、その彼が晩年区切り打ちで歩き遍路を歩いていたが、とうとう最後まで行くことは出来ずに亡くなってしまった。「おじいちゃんと同じ道を歩きたい」
事あるごとに母はそう言っていた。
あとから思うと母ひとりで行きたかったのかもしれないが、わたしも荷物持ちとしてついて行くことにした。
いつも通り、ドタバタで行き当たりバッタリな旅。優柔不断なわたしたち親子はどういう順番で回るかも決めないまま、四国に着いてしまった。
調べたところ、時計回りに回るのが準打ち、反時計回りが逆打ちで準打ちの3倍ご利益があるとされる。だがスタート地点はどこでもいいらしい。
「でもやっぱりはじめてだし、1番からがいいかしら?」
というわけで、急遽高松から高速バスをとって徳島に向かう。この時点で夕方の16時。そして今夜泊まるところすら決めていない。
慌てていろんなところに電話して、ぎりぎり見つかったのが一番札所から徒歩圏内のお遍路ハウス。
もうここが本当に素晴らしかった。
お遍路ハウスを運営されている高原さんは、50を過ぎてからお遍路を始めて、それから20年あまりの間でなんと138回巡礼されたそう。そのうち2回は歩き遍路。
1回だけでも大変な道のりなのに、それを100回以上もするなんて、気が遠くなりそうなお話です。
そしてそんな高原さんにいただいた「錦札」。
実はお遍路グッズの中の一つにお札があって、これはお寺に行った時に納めるだけでなく、お接待を受けたりお世話になった方へのお礼として渡すこともある。それだけご利益のあるものなのだ。われわれのような新米は白色だけど、
白:1~4回、
青:5~7回、
赤:8~24回、
銀:25~49回
金:50~99回
錦:100回以上
といった具合に、回数を重ねるごとに色が変わっていくのだ。
錦札は相当レアで、お守りがわりになるという。そんなレア札をしょっぱなからいただいてしまいました。
翌朝、朝からおいしい朝食のお接待を受ける。
そして高原さんに連れられて一番札所へ。
隣のお店でお遍路グッズと衣装を揃える。
わたしたちは金剛杖、白衣、ローソクとお線香、納め札、納経帳を手に入れた。
すげ笠も結局翌日買った。(本当は輪袈裟もあった方がいいらしい)
なんだかドラクエみたいだ。
いよいよ一番札所・霊山寺の中へ。
高原さんに手取り足取りお作法を教えてもらう。
1.山門で一礼
2.手水で身を清める
3.鐘を突く(出る時に鐘を突くのは縁起が悪いとされる)
4.本堂でローソクに火を灯し、お線香3本(過去、現在、未来の意)をあげる
5.納め札を箱に入れる
6.お経を唱える
詳しくはこちら
7.お賽銭を入れる
8.鈴を鳴らす
9.合掌
10.大師堂に行き4−9と同じことを繰り返す
11.納経所で御朱印をもらう
12.山門で一礼
知らなかった。こんなにやることがあるなんて…
でも高原さんにひとつひとつの意味や心得を教えてもらえたのですごく腑に落ちる。
そして高原さんのお人柄が本当に素晴らしくて、最初にここに来られて出会えて本当によかった。
2番札所
道祖神が見守ってくれる
途中から雨が降ってきて、どう見ても魔法使いにしか見えない人
女の厄年である33段の階段に1枚ずつお賽銭を載せていくと厄除けできるらしい
42段の男厄除坂が後につづく
強風に煽られながら橋を渡り
11番札所まで。
途中で出会ったポーランド人のマーチンと一緒になった。
かれは20kg近い重い荷物を背負って歩いていた。
近くの銭湯に行こうと歩いていると、うしろから来た車が停まる。
「このお弁当余っちゃったからよかったら食べて!」
そう言ってお弁当を差し入れしてくれた。
聞けばいつもこうして歩き遍路の人たちに余ったお弁当をおすそ分けしているらしい。
お店にはお接待用の募金箱まで用意しているそう。