まやたろの体当たり日記 Wanderlust

東京銀座のOL→山梨で農業と狩猟をはじめる→2016北米&南米自転車縦断→2017夏全国キャラバン→2019秋「なないろペダル」(出版舎ジグ)刊行!

Auroville(オーロヴィル)滞在記 前編

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南インドにオーロヴィルという世界最大のエコビレッジがあるらしい、と聞いたのはいつのことだっただろう。ここもまた、行ったことのある友人からは賛否両論いろいろと聞いていたけれど、自分で直接確かめてみなければわからない。

 

 

カウチサーフィンを通じて、オーロヴィルのすぐ近くで宿をしているというオーナーから連絡があり、「よかったら泊まっていって」と嬉しいお誘い。
チェンナイから南にバスで3時間ほど走り、電池残量1%のケータイと不安を握りしめながら暗い路地を歩いていった先にそのホステル・Dharmakanni Tropical Hutsはあった。


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「わあ〜!」思わず歓声をあげてしまった。なんて素敵な空間なのだろう。ヤシの葉でできた小屋やカラフルな小屋が立ち並び、ちょうどオーナーのメロやゲストのピーターが焚き火を囲んでビールを飲んでいるところだった。チェンナイはヒンズー教徒が多く、お酒を買うのが極めて難しいのだが、ここから隣町であるポンディチェリーまで行けばどこにでも売っているという。誘われるままにわたしも輪に混ざり、ビールをいただく。


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ピーターは旅をしながらジュエリーを作ってはニューヨークやロンドンの路上で売って生計を立てている自由人。彼女に連れられて一緒にインドに来たのだけど、その彼女にフラれてしまって傷心のご様子。それでもウクレレ片手に失恋ソングを奏でる陽気なオジサマ。他のゲストが少なかったこともあって、一緒に海や街を散歩したりウクレレでセッションしたりした。ある日一緒に町を歩いていたら、突然「あーーっ!!」と叫んだかと思えば走り出して行ってしまった。どうやら別れた彼女を発見したらしい。「別れてから2回も再会(この前にも一度再会していたらしい)するなんて、これは運命だと思わないかい!?」と彼女に言ったのだが、冷たくあしらわれ、傷はより深くなったようだった。彼は「このまま彼女の近くにいると期待してしまうから」、と翌日のバスでゴアに向かっていった。

 

わたしが着いたのは月曜の夜だったのでお客さんが少なく、コテージをまるまる一部屋使わせてもらった。たった数年でこんなにも素敵な空間を作り上げたメロ。彼のセンスは本当に素晴らしい。宿に泊めてもらったお礼に、わたしもヤシの葉を編んで装飾を手伝ったりした。


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ありがとうメロ〜!

メロにメロメロ〜!
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黄金の玉・Matrimandir

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オーロヴィルの代名詞とも言えるゴールデンボールことMatrimandir。中に入るには10-11時もしくは14-15時にビジターセンターに予約券を取りに行かねばならず、取れたとしても大抵2、3日後の券、という大変ややこしい仕組みだけど、それだけに中は本当にすごかった。螺旋階段を登って行くと壁も床も真っ白な空間に誘われ、天井から水晶玉を通して凝縮された太陽光が注ぎ込んでいる。太陽のエネルギーを全身に感じながら、静かに目を閉じる。オーロヴィル自体は宗教とはなんのつながりもないのだけれど、なんとも神秘的な空間だった。

そして建物に入る前には創立当初からここに住んでいるBさんという80歳になるおじさまのお話があったのだけど、それがまた素晴らしかった。

オーロヴィルができたのは1968年のこと。二度の大戦を経て冷戦の真っ只中、第三次世界大戦が起こるのではと言われていた頃。そんな時だからこそ、国も人種も宗教も関係なく調和した場を作ろうと世界中から人々が集まった。その象徴として150カ国以上の人たちがそれぞれ母国の土を一握りずつ持ち寄って、ハスの花の蕾のモニュメントの中に入れた。いつかその蕾が花開くことを願っているけれど、残念ながらまだまだ争いは絶えない、と語るBさん。

この建物を作るのになんと37年かかったそうだ。外側のピカピカの金色は純金で、これに使ってほしいとみんながこぞって自分のピアスやブレスレットを寄贈したという。近づくとわかるのだけれど、2cm四方ほどのタイルが(変色しないように一枚一枚ガラスで挟まれた金箔)が何十万枚も貼り合わされている。なるほどそりゃ時間かかるわ…

 

そして黄金の玉以上に感動したのはこのバンヤンツリーという大木。枝から地面へと根が伸びてそのままそれが支えになってるの。もはやどれが本体かわからないほど。強烈な生命力を感じる。


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オーロヴィルの塩対応に心折れる

オーロヴィルはあまりに広すぎて歩いては到底回りきれない。大概の人はスクーターやバイクを借りるのだが、わたしは自転車にした。毎日近くのレンタサイクルやさんに通って3日目にしてようやく手に入れた。

https://www.instagram.com/p/B793HIWjCnc/

まやたろ は じてんしゃ をてにいれた!

(ちなみに見た目は立派なマウンテンバイクだけど、シングルスピードかつシートが硬くて半日でオケツが悲鳴を上げました)

 

敷地内には各国や地域のパビリオン、全部で26の農場や20以上の学校、無数のレストラン、カフェ、宿…とありすぎてもう正直わけがわからない。

竹工房や草木染工房など何ヶ所か訪ねたけど対応が酷くて心折れそうになりながら宿に帰る。わたしはよっぽどオーロヴィルに嫌われているのか。

住民か敷地内の滞在客しか作れないオーロカードを持っていないと支払いができない場所もあったりして、誰でもウェルカムで調和した場を目指すとか言ってるのに、なんか矛盾してるなあと思ってしまいましたよ。
でもきっと中に入らないとわからないこともあるのかもしれないと思い、敷地内のゲストハウスに泊まることにした。

宿ひとつ予約するにも仕組みがとんでもなくややこしくめんどくさい。まずGuest reservationに行って空き状況を確認し、それから直接そのゲストハウスに行って「いつからいつまで滞在する」という紙を書いてもらい、さらに中心にあるTown Hallまで行ってそこでまた受付をしてから支払いをするという流れ。しかもそのどれもが2kmずつくらい離れている。わたしはその流れを把握していなかったために、あれが足りない、これは明日にならないと受け付けられない、と言われ3日連続でTown Hallに足を運ぶハメになった。チーン。

 

Solitude farm

翌日、大分の別府で南インドカレー屋を営むTANEファミリーとその友人であるラモさんと一緒にオーロヴィルを周ることに。何を隠そう今回のインド行きの決め手となったのは、友人のゆかちゃんがTANEに連れて行ってくれたからなのだ。

そしてずっと気になっていたソリチュードファームへ向かう。運良くオーナーのクリシュナさんがツアーをしているところだったので我々も混ぜてもらう。
彼の話がとんでもなく面白かった。


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まずは有機物を返すこと。彼は福岡正信氏の自然農法をリスペクトしていて、有機物を返すことで豊かな土壌が育まれ、人間が手を加えなくても母なる地球は有り余るほどに与えてくれる。奪い合いでなく与え合いなのだと改めて気づかせてもらった。

 

また、その土地にあったものを作ること。例えばここでは人参は育ちにくいけど、青パパイヤは何もしなくてもどんどん増えていく。そして食感も味も人参そっくりで言われなければわからないほど。

 

そして先人の知恵を受け継ぐこと。パパイヤもバナナも実だけでなく、種や茎や葉も、ジュースやお茶や薬に使える。ほうれん草やナスをわざわざ栽培しなくても、それに近い野生のものがあり、そちらの方が遥かに栄養価も高い。さまざまな薬効、食べ方、アーユルヴェーダの知識…昔からその土地に受け継がれてきた先人の知恵に何もかも詰まっている。失われかけた伝統を受け継ぐには言葉を知らなければならないと、フランス人である彼はタミル語も学んだ。

 

フードマイレージを極力ゼロに近づけることも重要。どんなに環境問題を語ったところで、ペルーやメキシコ産のアボカドを食べているようじゃ話にならないということ。(アボカド好きとしては耳が痛い)モリンガも今やスーパーフードとして崇められているけれど、地元の人からしたらなんでわざわざカプセルに入れるの?そのままサンバルにして食べた方がおいしいのに、という話。わざわざ遠くから取り寄せなくても、日本にだってたくさん薬草があるのだ。その使い方を知らないだけ。
いずれも頭が振り切れるほどうなずくばかり話だった。

 

農園の中を案内してもらう。南インド料理に欠かせないタマリンド。こんなふうに生えてるんだな。葉っぱも酸っぱくてタマリンドの味がした。


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ターメリックを収穫するおばちゃんたち。


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昼食は250ルピーと少し高めだったけど、話を聞いたからかより一層美味しく感じた。青パパイヤは本当に人参そっくり。


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終わったあとはセルフサービスで洗う。石けんや洗剤もすべて手作りで徹底している。

 

そのあともTANEファミリー御一行に付いて回り、昨日塩対応された草木染工房も中を見せてもらったり、チャイを飲んだり、夕飯を食べたり、たっぷりとオーロヴィルを堪能させてもらいました。ありがとう〜♡


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次回はソリチュードファームと同じくらい感銘を受けたサダナフォレストについて書きましょう。

 

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